Saito Laboratory 埼玉大学 理工学研究科 齋藤研究室

アプローチ

分析化学は,あるターゲット物質を計測可能にする方法を創出することを目指す学問分野です。しかし,我々は分析化学を用いて今までにない機能性化学物質を発見したり,創り出すことさえできると考えています。特に物質を空間的に分離する学問である分離科学を自在に操れることが我々の研究室の特徴です。この分離科学を用いて,複雑な試料から極微量で存在する未知の物質を発見することや,多様な化学物質を含む試料を自分たちで作り,その中から特殊な物質だけを単離・同定する手法を開発することができれば,分析化学発の新規物質の発見・創製ができるはずです。

この様なことを我々は既に実現し,現在はさらに高度化することを試みています。ここで重要な学問となるのは,物質の性質と物質が置かれる場(反応場や分離場)の化学を探求し,特異な計測機能を持ったシステム(分離分析システム)を生み出すこと,すなわち「分析化学」です。

クロマトグラフィーや電気泳動などの分離分析法は,化学,生物学,薬学,医学など多くの研究・産業分野で欠くことのできない日常的な手段として用いられています。我々の研究室ではこれら分離分析法に化学平衡・反応速度論さらには分光学や生化学的手法あるいは数学的解析法さえも組み合わせ,独自の分析システムを構築することで,「分析化学」発の生化学,無機化学,環境化学に寄与する研究も行っています。

 具体的には,以下のような研究テーマを進めています。

  1. 生体中の金属結合型タンパク質のスペシエーション(化学形態分析)法の開発
  2. 物質を認識するDNAアプタマーの高機能化に関する研究
  3. 微量放射性元素を検出可能な分離分析法の開発
  4. 生体物質を認識可能な分子モチーフに関する研究
  5. 金属-有機構造体の均一ナノ空間と結晶構造変化を利用する物質認識
  6. リン酸エステルを用いる超分子ポリマーの合成と機能性開拓
  7. クラスレートハイドレートの分離場としての機能性開拓とハイドレート表面の分析

教育目標

齋藤研究室では,分析化学の研究を通して,
自律し,豊かな発想を持つ研究者および技術者を養成すること
を教育目標にしています。

まず,研究室に入ると教育のスタイルが,教師から教えられるという今まで経験してきたスタイルと全く違うことに気がつくと思います。4年時には研究テーマを与えられますが,そこから教員のアドバイスを受けながら,自律的(他人から指示だけではなく,自分自身で考えて自発的に行動すること)に研究を進めていく必要があります。いきなり最先端の方法の開発や学説に挑戦していくわけですから,簡単ではありませんし,日々の研究では試行錯誤が続きます。 その中で,最先端の知識を身につけるとともに,研究テーマに自分自身の発想を加えていき,最終的には教員と共に研究チームの一員としてブレークスルーを狙っていくことになります。しかも,予定通りに研究がうまく進むとは限りません。従って,卒業というタイムリミットを抱えながら,プレッシャーとも向き合っていかなければなりません。一方でこの様に,問題解決能力と発想力,そして日々の努力を必要とする総合的な課題解決型の教育は,研究室でしか培えないものです。

さらに,齋藤研ではthe Partnership for 21st Century Skills という国際組織で提唱される4Cの能力(Creativity, Critical thinking, Communication, Collaboration;創造性,懐疑的思考力,コミュニケーション能力,協働性)の養成を次世代の研究者や技術者に最重要なものと考えています。創造性は,独自の新しい有用なことを考え付き,実際に創り出す能力です。懐疑的思考力は,物事を簡単に信じるのではなく,疑いを持って多面的に何度も評価することで,物事の本質を見抜く力です。コミュニケーション能力とは単に情報伝達するだけでなく,効率的かつ正確に意思疎通・相互理解する能力と考えます。協働性は,単に一緒に働くことではなく,ある目標に対し一人一人の独自の特徴を組み合わせて,建設的に力を合わせて困難なこともチームで突破する能力です。

齋藤研究室は,社会に出る前の最後の教育機関として,これらを身に着ける教育を目指しています。これらを学ぶためには,独自性の高い研究テーマとそれらを生み出す場としての研究室が必須かつ最適だと考えています。よって,齋藤研の教員はできるだけ興味深い研究テーマと自由闊達な雰囲気の研究室を用意しています。我々の研究テーマは研究のページにまとめてあります。どれも世界的にも齋藤研でしか行っていない研究が揃っています。また,研究室の雰囲気は「研究室学生の声」や「研究室写真」を見てくれれば分かると思いますし,興味があればいつでも見学に来てください。

厳しい面もありますが,基本的に研究は楽しいものです。これまで習ってきた化学を思う存分に,自由自在に使って楽しみながら,私たちだけの新しい機能性分子,学説を発見・創出しませんか?         

(齋藤・半田)

研究室学生の声

  • 私は,研究室の教育理念と先生の人柄から齋藤研究室を選びました.齋藤研究室では,各々が自律すること目標に,自主的に行動し研究活動に励んでいます. また,この研究室では一人一人に世界最先端かつ独創的なテーマが与えられます.壁にぶつかることも多々ありますが,先生方の手厚いサポートとコミュニケーションを取りやすい環境が整っているため,協力して研究に取り組むことが出来ます.私自身,研究活動にとてもやりがいを感じ,充実した大学生活を過ごしています.
    (学部4年)
  • 私は,講義を通して分析化学に興味を持ち,当研究室を選びました.研究室に入ってから感じたことは,積極的にコミュニケーションをとりながら研究に取り組める環境になっているということです.与えられたテーマについて分からない事や困ったことがあれば,先輩はもちろん先生方ともコミュニケーションをとりながら研究を進められています.充実した環境でやりがいのあるテーマの研究を行いたい人にお勧めしたい研究室です.
    (学部4年)
  • 私は環境化学,分析化学に興味を持ちこの研究室を選びました.誰も成し得なかったことを発見・開発するためには,試行錯誤を重ねるなど大変なことも多いです.しかしながら,将来,研究者や技術者として必要不可欠な発想力を当研究室では養うことができると考えています.齋藤研は,チーム一体となって研究を進めながらも,時には競い合い,互いに刺激を与え合うこともあります.イベントも学生主体で考えることが多く,メリハリをつけつつ研究生活を楽しんでいます. 
    (修士1年)
  • 齋藤研究室は,先輩の研究テーマの内容をそのまま引き継ぐのではなく,先行研究を基盤として,より発展した内容や新規のテーマが1人1人に与えられます.内容の多くは,世界的に見ても,あまり例を見ないようなテーマで,未知なる現象の解明や新規分析手法の開発といった新規性に興味を感じる人にとっては,非常に魅力的な研究室だと思います.当研究室では,先生方の指示で動くのではなく,自律性が求められます.もちろん,難解なテーマが多いため,壁にぶつかることもありますが,先生方や先輩方とのコミュニケーションがとりやすい環境作りがされているので,不安に思う必要はないと思います.
    (修士1年)
  • 当研究室は様々な化学の知識を用いて,新たな分析法の開発を行っています.日本だけでなく,世界で注目されるような研究を目指し実験に取り組む日々はとても新鮮で充実しています.研究はうまくいかないことも多々ありますが,今まで未知であった知識や知見を獲得したときの喜びは他では得難いもので,やりがいを感じています.先生方,学生共にやる気に満ち溢れており,自分も頑張ろうと思える素敵な研究室です.
    (修士1年)
  • 当研究室の魅力は何といっても「新しい分析法を開発し,今までに測定できないものを測定可能にする」という点です.新しいことが解明されるということは,それだけ,未知の世界について知るということです.当研究室では学生1人1人にそれぞれの分野における世界最先端の研究テーマが与えられます.私も電気泳動法を用いて,将来医薬品としての応用が期待できる特殊なDNAの開発についての研究を行っています.非常にやりがいのあるテーマであり.好奇心と向上心がそそられます.先生方は学生の自主性を尊重してくれるため,自分自身で新しい分析法を開発したい,やりがいのある仕事がしたいと思う人,世界最先端の分析化学に興味がある方,自分自身で新しい分析法を開発したいという方にはお勧めの研究室であると思います.
    (修士1年)
  • 私がこの研究室を選んだ理由は先生の人格にあります.学部時代に履修した授業や研究室見学を通して当研究室の指導方法,研究や教育に対する真摯な姿勢,そして何よりも研究を楽しむ姿に魅力を感じ,この研究室を選びました.先生方の強力なサポート,先輩方の助言の下,同期と切磋琢磨できるこの研究室の環境に充実感とやりがいを感じています.
    (修士1年)
  • 私は,分析化学の授業を受けたときに強く興味を持ったため当研究室を選びました.当研究室は,1人1つの研究テーマが与えられ,自分の考えた通りに自由に研究を進めることのできる研究室です.全員テーマは違いますが,決して1人で黙々と研究を進めるような研究室ではなく,相談できる環境が整っているため,互いに切磋琢磨して研究を行うことができます.私自身,当研究室に配属したことで大学生活がより充実していると感じています.
    (修士1年)
  •  私は、幅広い化学の知識を集積して1つのシステムを構築することで、これまでの方法では測定できない物や量を測定可能にする、というスタイルに惹かれ、当研究室を選択しました。 「はじめに」の項目にある通り、当研究室ではクロマトグラフィーや電気泳動法などの分離分析法を用いて様々な知見を得ています。私も電気泳動法を用いて、金属錯体の新規分離分析法の開発を行っております。研究室は私たち学生が自発的に知識を得る努力をし、研究を行う最初の場であり、今後の人生に大きな影響を与える場だと考えています。そういった意味で、当研究室で行っている分析法の開発は化学業界に及ぼす影響が大きく、非常にやりがいがあると思います。研究室選びに悩んでいる方や分析化学という学問に興味のある方は、是非とも一度見学に来てみて下さい。
    (修士2年)
  •  私は分析化学に強い興味を持ち、環境に優しい、新しい分析方法の開発を目指して、当研究室を選びました。研究室に入ったばかりの頃は、使ったことがない高技術の装置がたくさんあり、それと同時に、言葉も通じないことが多くて苦労を感じました。しかし、先生たちは勉強のことだけでなく生活のことにも配慮してくださり、さらに、先輩たちには言葉の壁を乗り越え、優しく丁寧に教えてもらいました。熱心に取り組んでいる研究室の皆さんを見て、やる気をもらい、また、先輩たちが責任をもち後輩に指導することに感心しました。今は研究に慣れ、研究の面白さを感じながら、意欲的な皆と仲良く、努力する日々を過ごしています。
    (修士1年・留学生)
  •  私は、当研究室が単に既存の方法により分析を行なうのではなく新しい分析法の開発を目的としているという点に魅力を感じ、当研究室を希望しました。 実際に卒業研究に取り組み始め、まだまだ分からないことだらけですが、これまで誰も取り組んでいないテーマについて自分で考え解決していく、という研究の面白さが少しずつ分かってきたように感じます。  また研究室の雰囲気が良く、研究に集中できる環境なので、これまでの大学生活で最も充実した生活を送れていると感じています。
    (学部4年)

研究室学生の受賞

  • 2023.11  M1の杉山さんが令和5年度第2回埼玉大学学生表彰を受賞
    表彰状
  • 2023.11  M2の保住さんが腐植物質学会第39回講演会にて優秀発表賞を受賞
    表彰状
  • 2023.5  M1の杉山さんが第83回分析化学討論会にて若手ポスター発表賞を受賞
    表彰状
  • 2023.3  M2の髙田さんが令和4年度第2回埼玉大学学生表彰を受賞
    表彰状
  • 2023.3  M1の保住さんが令和4年度第2回埼玉大学学生表彰を受賞
    表彰状
  • 2022.12  M2の佐々木さんが第4回生体膜デザインコンファレンスにてポスター発表賞を受賞
    表彰状
  • 2022.12  M1の関さんが第4回生体膜デザインコンファレンスにてポスター発表賞を受賞
    表彰状
  • 2022.11 M2の髙田さんが8th International Conference on Ion Exchange (ICIE2022)にてPoster Awardを受賞
    表彰状
  • 2022.9  M1の保住さんが日本分析化学会第71回年会にて若手ポスター賞を受賞
    表彰状
  • 2021.12  M2の山縣さんが第37回イオンクロマトグラフィー討論会にて学生プレゼンテーション賞を受賞
    表彰状 受賞インタビュー
  • 2021.11  M2の山縣さんが令和3年度 東日本分析化学若手交流会にてポスター優秀賞を受賞
    表彰状
  • 2021.11  M2の中野さんが第37回日本腐植物質学会講演会にて優秀発表賞を受賞
    表彰状 受賞インタビュー
  • 2021.10  M1の佐々木さんが学長賞を受賞
  • 2021.7   M1の大野さんが第72回日本電気泳動学会総会にて優秀ポスター賞を受賞
    表彰状 受賞インタビュー
  • 2021.5   M1の佐々木さんが第81回分析化学討論会にて若手ポスター発表賞を受賞
    表彰状 受賞インタビュー
  • 2021.3   B4の秋さんが応環同窓会最優秀学生賞を受賞
    表彰状
  • 2020.11  M1の中野さんが日本腐植物質学会第36回講演会にて優秀発表賞を受賞
    表彰状
  • 2020.6   B4の大野さんが応環同窓会最優秀学生賞を受賞
    表彰状
  • 2019.11  M2の坂本さんが第39回キャピラリー電気泳動シンポジウム SCE2019にて最優秀ポスター賞を受賞
    表彰状
  • 2019.10  M1の津田さんが第34回日本イオン交換研究発表会にて優秀賞を受賞
    表彰状

2000-2018(渋川・齋藤研)

  • 2018.12  M2の丸茂さんが第38回キャピラリー電気泳動シンポジウム SCE2018にて最優秀ポスター賞を受賞
    表彰状
  • 2018.11  M1の比護さんがメタロミクス研究フォーラムにて特別奨励賞を受賞
    表彰状
  • 2018.3  D3のFouzia AkterさんがHot Article Awardを受賞
    表彰状
  • 2017.11  M2の石川さんが第37回キャピラリー電気泳動シンポジウムにて最優秀ポスター賞を受賞
    表彰状
  • 2017.11  M2の朝倉さんが第37回キャピラリー電気泳動シンポジウムにて最優秀ポスター賞を受賞
    表彰状
  • 2017.11  M2の石川さんが第68回日本電気泳動学会総会にて優秀発表賞を受賞
    表彰状
  • 2017.11  M2の上村さんが第7回CSJ化学フェスタ2017にて優秀ポスター発表賞を受賞
    表彰状
  • 2017.7  M2石川さんが日本分析化学会関東支部若手交流会にて優秀ポスター賞を受賞
    表彰状
  • 2016.11  M2山下君が第27回クロマトグラフィー科学会議にて優秀講演賞を受賞
    表彰状
  • 2016.7  M2土田さんが東日本分析化学交流会にて最優秀ポスター賞を受賞
    表彰状
  • 2016.7  D3中村君が東日本分析化学交流会にてDC講演賞を受賞
  • 2015.11  M1土田さんが第35回キャピラリー電気泳動シンポジウム(SCE2015)にて最優秀ポスター賞を受賞
    表彰状
  • 2015.5  M2廣瀬君が日本分析化学会関東支部若手交流会にて最優秀ポスター賞を受賞
    表彰状
  • 2015.5  D2中村君が日本分析化学会関東支部若手交流会にて優秀ポスター賞を受賞
  • 2015.5  D3大内君が日本化学会第95春季年会にて学生講演賞受賞
    表彰状
  • 2013.11  M1後藤君が第33回キャピラリー電気泳動シンポジウム(SCE2013)にて最優秀ポスター賞を受賞
    表彰状
  • 2013.5  M2中村君が日本分析化学会関東支部若手交流会にてポスター賞を受賞
  • 2011.10  M1仲村君が日本分析化学会関東支部若手交流会にてポスター賞を受賞
  • 2010.7  M1大内君が日本分析化学会関東支部若手交流会にてポスター賞を受賞
  • 2010.7  M1大島君が日本分析化学会関東支部若手交流会にてポスター賞を受賞
  • 2009.6  M1中野君が分離技術会年会2009にて学生賞を受賞
  • 2008.9  M1榎本君が日本分析化学57年会にてポスター賞を受賞
    表彰状