分光若手シンポ (2017/12/31)


 2017年12月2日(土)に埼玉大学において,新学術領域「柔らかな分子系」の第27回ワークショップ「計測を支える先端的レーザー分光の最前線」を,日本分光学会先端レーザー分光部会の主要行事「第13回若手研究者による先端的レーザー分光シンポジウム」を兼ねて開催いたしました.このシンポジウムは,普段の学会や討論会などで長い講演時間をもらえることがあまりない大学院生,ポスドク,助教といった若手研究者に,40分程度で(今回は都合で35分となってしまいました)思う存分に自分の研究を語ってもらい,予定調和でない真剣勝負の議論を通じて交流を深める,ということを目的としています.今回は11名の若手研究者を招待し,領域と部会の内外の先生方,学生の皆さん,総勢56名の参加を得て,とても充実したワークショップとなりました.

 山川紘一郎さん(学習院大)は対称性の議論を中心に分子分光学の基礎的問題への取り組みから講演を始めて,核スピン転換の研究まで話を展開しました.浦島周平さん(理研)は和周波発生(SFG)分光法の原理をわかりやすく解説し,埋もれた界面の構造についての最先端の研究を発表しました.小林雄貴さん(UC Berkeley)は3 fsポンプ・100 asプローブの(恐らく世界最高速の時間分解能と言っていい)過渡吸収分光による気相原子の電子コヒーレンスの研究を紹介しました.和田資子さん(量子科学技術研)はクーロン爆発の二次元運動量マップによるジクロロエタン異性体の識別を中心に丁寧に発表しました.劉宗翰さん(阪大)はフェムト秒レーザーを用いたインスリンの結晶化とアミロイド線維化の誘起について講演しました.櫻井敦教さん(東大)は超高速赤外分光法による固体酸化物中のプロトンダイナミクスの研究を紹介しました.佐々木裕太さん(東工大)はエレクトロスプレー・冷却イオントラップと組み合わせたクラスター分光によるK+チャネル選択フィルター部分の構造についての研究を発表しました.瀬戸浦健仁さん(阪大)はフォトクロミズムを利用した新しいレーザートラップ法を原理からわかりやすく紹介しました.城塚達也さん(東北大)は水界面のSFGスペクトルにおける三次非線形光学感受率の寄与を分子動力学シミュレーションによって理論的に見積もり,その結果を報告しました.鬼塚侑樹さん(広島大)は状態選別イオンイメージングによるアンモニア誘導体の非断熱過程の動力学研究の成果を紹介しました.近藤崇博さん(学習院大)はプラズマを照射した水表面をSFGで調べた結果を発表しました.

 質疑応答では,怒鳴り合いこそなかったものの,研究の根幹にかかわる厳しい質問を領域代表の田原太平さん(理研)らから受けた若手が一歩も引かずに応戦していた姿を頼もしく感じました.懇親会の参加率もとても高く,初めて会った研究者同士が分光研究を通じて楽しく交流することができました.