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埼玉大学大学院理工学研究科 渋川・齋藤研究室(分析化学)

  研究室紹介Introduction

渋川・齋藤研究室の分析化学へのアプローチ

 分析化学は単に分析を行うことが目的ではなく,これまでの方法では測定できないものを測定可能にする方法を創出することを目指す学問分野です。ここで測定の対象となるのは,特定の物質の量や濃度だけではありません。化学種の構造や物性,さらには各種計測の対象となる分離場および反応場をつくっている"相"や"界面"の状態や構造に関する情報を獲得することを目的としています。そのためには,物質と物質が置かれる場(反応場や分離場)の化学を探求し,新規な計測機能を生み出すシステムを構築する戦略を打ち立てることが重要です。 

 クロマトグラフィーや溶媒抽出,電気泳動などの分離分析法は,化学,生物学,薬学,医学など多くの研究・産業分野で欠くことのできない日常的な手段として用いられています。身近な例では,大気や河川水・海水など環境中の微量有害物質の測定,食品・医薬品の検査や医療・臨床検査などが挙げられるでしょう。しかし,産業や社会的な要請とともに分析対象となる物質の数は急速に増え続けており,なおかつ多種多量の共存物質の中から極めて微量の目的物質を迅速かつ正確に測定する要求が強まってきています。
 一方,各種分離分析法においては,二相間分配あるいは界面への吸着が化学種(分子やイオン)によって異なることや,目的化学種の物性・反応性の違いに基づいて分離が行なわれています。しかし,これを逆に分離される化学種の立場から見れば,分離の場である"相"や"界面"の状態や構造によって,分配あるいは吸着の程度が決まることを意味します。つまり分離分析法は単に混合物をその成分ごとに分離するだけの方法ではなく,分離場内に入っていく化学種の構造や物性,さらには分離場をつくっている"相"や"界面"の状態や構造に関する情報を与えてくれる方法なのです。当研究室ではこういった視点から分離分析法をとらえ,液体クロマトグラフィーや電気泳動法による新しい溶液内化学反応の平衡論および速度論的解析法を提案しているほか,他の方法では得ることのできない,含水高分子ゲル中の水の状態を解析する方法を創案しています。

 現在,このような基礎的研究の成果に基づいて,化学反応を利用した新しい原理に基づく分離法や,水だけを用いた(有機溶媒を使わない)環境にやさしい分離法の開発,従来にない感度や選択性を持つ金属イオンや生体高分子を認識する新規発光プローブ分子の設計などの研究を進めています。主な研究テーマ例は以下の通りです。


1. オンライン化学種変換液体クロマトグラフィーの開発
2. 機能性高分子を用いた水性二相抽出に関する研究
3. 含水高分子ゲル中の水の構造とゲルの分離選択性に関する研究
4. 高温高圧水を用いた分離分析法に関する研究
5. 金属化学種のスペシエーション(化学形態分析)に関する研究
6. 金属イオンおよび生体分子認識蛍光プローブの開発に関する研究
7. 金属錯体の解離速度反応機序の解明に関する研究


教育目標〜研究室を志望する学生の皆さんへ〜

渋川・齋藤研究室では,分析化学の研究を通して,自立し,豊かな発想を持つ研究者および高度な技術者を養成することを教育目標にしています。

 まず,研究室に入ると教育のスタイルが,今まで経験してきたものと全く違うことに気がつくと思います。4年時に研究テーマを与えられますが,そこからは教員のアドバイスを受けながら, 自力で研究を進めていく必要があります。いきなり最先端の方法の開発や学説に挑戦していくわけですから,簡単ではありませんし,日々の研究では試行錯誤が続きます。 その中で,最先端の知識を身につけるとともに,研究テーマに自分自身の発想を加えていき,最終的には教員と共にブレークスルーを狙っていくことになります。 しかしながら,考えている通りに研究がうまく進むとは限りません。 従って,卒業というタイムリミットを抱えながら,プレッシャーとも付き合っていかなければなりません。
この様に,問題解決能力と発想力,そして日々の努力を必要とする総合教育は,研究室でしか培えないものです。

 さらに,渋川・齋藤研ではコミュニケーション能力の養成も重要なものと考えています。 4年生で就職する諸君は,研究室での一年間が,社会に出る前の最後の教育機関による教育になります。 従って,この一年は社会に出る直前の準備期間とも位置付けられます。 この研究室という場,そして教員との付き合いの中で,コミュニケーション能力を磨くとともに,社会人になるための一般常識も身につけて欲しいと考えています。

 また,大学院では,さらに高度な研究に着手します。 教員からはアドバイスをもらうだけでなく,教員と研究に関する議論ができるようになることが必要になってきます。 研究生活を通して,自分独自の研究といえるものを生み出せるようになることを願っています。

 厳しい面もありますが,基本的に研究は楽しいものです。一年あるいは三年を通して,存分に研究を楽しんでください。そして,卒業時には今までとは違う成長した自分に出会えるよう頑張ってください。

(渋川・齋藤


研究室学生の声

 私は、幅広い化学の知識を集積して1つのシステムを構築することで、これまでの方法では測定できない物や量を測定可能にする、というスタイルに惹かれ、当研究室を選択しました。 「はじめに」の項目にある通り、当研究室ではクロマトグラフィーや電気泳動法などの分離分析法を用いて様々な知見を得ています。私も電気泳動法を用いて、金属錯体の新規分離分析法の開発を行っております。研究室は私たち学生が自発的に知識を得る努力をし、研究を行う最初の場であり、今後の人生に大きな影響を与える場だと考えています。そういった意味で、当研究室で行っている分析法の開発は化学業界に及ぼす影響が大きく、非常にやりがいがあると思います。研究室選びに悩んでいる方や分析化学という学問に興味のある方は、是非とも一度見学に来てみて下さい。
(修士2年)
 私は分析化学に強い興味を持ち、環境に優しい、新しい分析方法の開発を目指して、渋川研究室を選びました。 研究室に入ったばかりの頃は、使ったことがない高技術の装置がたくさんあり、それと同時に、言葉も通じないことが多くて苦労を感じました。しかし、先生たちは勉強のことだけでなく生活のことにも配慮してくださり、さらに、先輩たちには言葉の壁を乗り越え、優しく丁寧に教えてもらいました。熱心に取り組んでいる研究室の皆さんを見て、やる気をもらい、また、先輩たちが責任をもち後輩に指導することに感心しました。今は研究に慣れ、研究の面白さを感じながら、意欲的な皆と仲良く、努力する日々を過ごしています。
(修士1年・留学生)
 当研究室では、大きく二つのグループに分かれて研究を行っています。 研究室は、実験中は一生懸命作業に取り組み、普段は仲良く、笑いが絶えないといった、メリハリがある研究室です。 私は、まだ知られていない現象や分析方法を発見、開発しようとする当研究室の研究に対して非常に魅力とやりがいを感じています。
(修士1年)
 私は、当研究室が単に既存の方法により分析を行なうのではなく新しい分析法の開発を目的としているという点に魅力を感じ、当研究室を希望しました。 実際に卒業研究に取り組み始め、まだまだ分からないことだらけですが、これまで誰も取り組んでいないテーマについて自分で考え解決していく、という研究の面白さが少しずつ分かってきたように感じます。
 また研究室の雰囲気が良く、研究に集中できる環境なので、これまでの大学生活で最も充実した生活を送れていると感じています。
(学部4年)
 当研究室では一人一人異なる研究テーマが与えられ、日々実験に取り組んでいます。 自ら考え自ら行動する必要があり、初めのうちは様々な面で苦労しましたが、毎日自分の成長を実感でき、充実した生活を送っています。 また、先輩方との仲が良く、研究以外のことも気軽に相談でき、雰囲気の良い研究室であると思います。
(学部4年)

研究室学生の受賞

2019.11  M2の坂本さんが第39回キャピラリー電気泳動シンポジウム SCE2019にて最優秀ポスター賞を受賞   
2019.10  M1の津田さんが第34回日本イオン交換研究発表会にて優秀賞を受賞   
2018.12  M2の丸茂さんが第38回キャピラリー電気泳動シンポジウム SCE2018にて最優秀ポスター賞を受賞   
2018.11  M1の比護さんがメタロミクス研究フォーラムにて特別奨励賞を受賞   
2018.3  D3のFouzia AkterさんがHot Article Awardを受賞   
2017.11  M2の石川さんが第37回キャピラリー電気泳動シンポジウムにて最優秀ポスター賞を受賞   
2017.11  M2の朝倉さんが第37回キャピラリー電気泳動シンポジウムにて最優秀ポスター賞を受賞   
2017.11  M2の石川さんが第68回日本電気泳動学会総会にて優秀発表賞を受賞   
2017.11  M2の上村さんが第7回CSJ化学フェスタ2017にて優秀ポスター発表賞を受賞   
2017.7  M2石川さんが日本分析化学会関東支部若手交流会にて優秀ポスター賞を受賞   
2016.11  M2山下君が第27回クロマトグラフィー科学会議にて優秀講演賞を受賞   
2016.7  M2土田さんが東日本分析化学交流会にて最優秀ポスター賞を受賞   
2016.7  D3中村君が東日本分析化学交流会にてDC講演賞を受賞

2015.11  M1土田さんが第35回キャピラリー電気泳動シンポジウム(SCE2015)にて最優秀ポスター賞を受賞   
2015.5  M2廣瀬君が日本分析化学会関東支部若手交流会にて最優秀ポスター賞を受賞
2015.5  D2中村君が日本分析化学会関東支部若手交流会にて優秀ポスター賞を受賞

2015.5  D3大内君が日本化学会第95春季年会にて学生講演賞受賞
2013.11  M1後藤君が第33回キャピラリー電気泳動シンポジウム(SCE2013)にて最優秀ポスター賞を受賞

2013.5  M2中村君が日本分析化学会関東支部若手交流会にてポスター賞を受賞

2011.10  M1仲村君が日本分析化学会関東支部若手交流会にてポスター賞を受賞

2010.7  M1大内君が日本分析化学会関東支部若手交流会にてポスター賞を受賞

2010.7  M1大島君が日本分析化学会関東支部若手交流会にてポスター賞を受賞

2009.6  M1中野君が分離技術会年会2009にて学生賞を受賞

2008.9  M1榎本君が日本分析化学57年会にてポスター賞を受賞