研究内容Research
非鉛高温動作PTCサーミスタの合成(武田)
サーミスタとはThermally Sensitive Resistorの略で、温度変化に伴いその抵抗値が極めて大きく変化する抵抗体のことを指します。またPTCサーミスタとは、下図に示すようにある温度(キュリー温度:Tc)に達すると抵抗値が急激に上昇するという正の温度係数(Positive Temperature Coefficient)をもつサーミスタのことで、その主成分はペロブスカイト型強誘電体であるBaTiO3(チタン酸バリウム:チタバリ)セラミックスからなります。チタバリのTcは本来130℃ですが、他の元素を微量添加することでTcを変化させ、動作温度を制御することができます。PTCサーミスタは過電流保護素子、定温発熱体、消磁用素子とその用途は多岐にわたります。
本研究テーマは「非鉛高温動作PTCサーミスタの開発」です。これはどういうことでしょうか?実は、市販製品のPTCサーミスタにはTcを上昇させ動
作温度を上げるために、チタバリのBa2+の一部をPb2+(鉛)に置換させています。また、動作温度を上げるためには鉛は不可欠とされております。ここで、近年、電子材料の高機能化に重要な役割を果たしてい原材料の酸化鉛(PbO)に関して、環境問題の観点から欧米を中心にその使用が規制の対象となりつつあります。そこで本研究では、環境にやさしく(非鉛)高<Tcを有するPTCサーミスタの開発に取り組み、鉛(Pb2+)の代わりにビスマス(Bi3+)とナトリウム(Na+)を置換させることで、市販品である含鉛PTCサーミスタと同等の特性をもつ非鉛PTC材料の開発に成功しました。現在は、極低抵抗をもつ過電流保護素子の開発に取り組んでおります。

関連トピックス
- Takashi Tateishi, Takuya Hoshina, Hiroaki Takeda*, Takaaki Tsurumi,
“Fabrication of Lead-free Semiconducting Ceramics Using BaTiO3-(Bi1/2Na1/2)TiO3 System by adding CaO”
Journal of the Ceramic Society of Japan,, 119, 828–831 (2011).
DOI: 10.2109/jcersj2.119.828 - Hiroaki Takeda*, Hisashi Harinaka, Tadashi Shiosaki, Mohammad A. Zubair, Colin Leach, Robert Freer, Takuya Hoshina, Takaaki Tsurumi,
“Fabrication and positive temperature coefficient of resistivity properties of semiconducting ceramics based on the BaTiO3-(Bi1/2K1/2)TiO3 system”
Journal of the European Ceramic Society, 30, 555-559 (2010).
DOI: 10.1016/j.jeurceramsoc.2009.08.009 - Hiroaki Takeda*, Wataru Aoto, Tadashi Shiosaki,
“BaTiO3-(Bi1/2Na1/2)TiO3 solid-solution semiconducting ceramics with Tc130 oC”
Applied Physics Letters, 87,102104 (2005).
DOI: 10.1063/1.2042551